きた みた よんだ

みたりよんだりしたものを記録するブログ

【小説】かもめ食堂

ゆるふわに見える日常の土台は、強く凛々しい精神

映画を観てからの小説。
映画からは怒りや強さがかなり抜かれていたし、登場人物たちから人生に対する後悔や不安がすっぽり抜けてたけど、小説にはそれらがきちんと描かれている。
優雅な生活なのに、かもめ食堂がなぜ運営できているのか、しっかり根拠が描かれているから安心して読めます。

でもこれを「普通だけどおかしな人々が織りなす幸福な物語」と呼ぶのは間違い。

やるべき努力を積み上げ、自らの意思で道を行く人が幸福になるのだ。
つまりサチエさん強すぎ伝説

 

 

 

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

 

 

 

 

【心理学】顔は口ほどに嘘をつく

読み始め、最初のテストは5問正解(でも一瞬よりは長く見てたから正解率低い)
口元ばかりを見る癖があるようで、眉毛の形や歪み方をきちんと見ていなかった。
「おでこを出すと幸せになれる」という言葉は、「おでこを出すことによって眉が見えやすくなり、感情の行き違いや誤解が減るからストレスが少なくなる」ということなのかもしれないと思う。

感情表現は普遍的であり、文化によって異なるものではない

西洋に住んだことがなく、映画も観たことがない人達と、英語を話しアメリカのスクールに通う学生達に感情表現のテスト(様々な表情を撮った写真を見せ、この人はどういう状態かと説明してもらう)を行ったところ、文化の差を超えて大多数の人が同じ判断を下した。翻訳による問題があるにも関わらず、文化が異なっても、同じ表現に異なった感情を割り振る例は一度もなかった。性別による変化もなし。

感情の表明は条件反射で起こる

例えば一人で運転している時に事故に遭いそうになったら、驚いた顔をする。
  1. 感情は私たちの安全にとって、極めて重要だと思われる物事への反応であり
  2. 感情は素早く始まるので、それを引き起こす心の中のプロセスに、私たちは気づかない。

感情には引き金がある

人が怒る時には、様々な理由がある。寝不足や空腹といったフィジカルな理由や、怒りやすい性格、日々のストレスや相手と長期間揉めているために怒りを感じやすくなっている、といった「現在の問題」以外に、怒っている人が過去に受けたことで怒りの引き金が引かれている可能性もある。怒っている人は、過去のシナリオを再演しているのである。
例:何かうまくやれなかった時には父親が必ずからかう家庭で育つ(父親は冗談半分)
→人生のかなり早い段階で「一人の力ある人間が自分をからかうことを通してさげずむ」というシナリオが、情動喚起データベースに書き込まれる
→その後長い間、誰かが自分をからかう気配を感じると、怒りを持って反応する

引き金の力を弱めるには

  1. 自分をそんなにも怒らせているものが何かを突き止める(怒りの理由を自覚しないうちに感情は自動評価される)
  2. 自分が怒りに駆られた時に気付いた時や指摘された時に、記録をつける→記録しているうちに、過去の記憶への紐付けに気付く可能性がある

感情と気分の違い

感情ははるかに短く、気分は長い。
気分は特定の感情を喚起しやすい。苛立っている時、怒る機会を探しはじめる。
また、気分に自覚は産まれにくいが、感情は気付き、原因を特定することができる。

持続時間で判断するとわかりやすい
感情→数秒で消えることもあれば、数分続くこともある
気分→数時間、もしくは1日・2日と続くこともある
性格的気質→その人の持つ傾向。鬱気質の人は悲しい気持ちや憂鬱な気分を抱きやすい等

怒りは怒りを呼ぶ

怒りの連鎖は急激にエスカレートしていく危険性がある。相手の怒りにムッとせずにはいられない。とくに相手の怒りに正当性がなく、独りよがりのものであればなおさら。
他人の怒りはもう一つの怒りの原因とみなすことができる

人が期待に反した行動をする時も、怒りに駆られる場合がある

実は愛する人ほど最も私たちを傷つけ、失望させやすい。
恋愛の初期、恋人のイメージを勝手に膨らませ、理想化したイメージに相手が従わないと怒りを覚える。
知らない人よりも親密な人に怒りを示す方が自然だと判断するためかもしれない。
一番気にかけてる人に最大の怒りを覚える一つの理由は、彼らが私たちのことをよく知っている人間だから。
私たちの恐れや弱み、何が私たちを傷つけるかを、それらの人たちは知っている(と思い込んでいる)

怒りのバリエーション

かすかな苛立ちから激怒まで幅広い。
憤慨→独りよがりの怒り
拗ねる→受け身的な怒り
激昂→忍耐に忍耐を重ねた結果
復讐→過去にされた仕打ちに対する怒りの行動だが、一定の時間がおかれ、自分のされた仕打ちより過激な行動となって現れる
恨み、憎しみ→普段は忘れていても、対象に触れると再燃する怒り。長期的に抱くもので、化膿し、忘れられなくなるものもある。恨みが心の中で熟成されると復讐となる可能性も。

相手が怒りの表情を出していても、あなたに対して怒っているかどうかはわからない

たいていの感情の表情は半秒〜4秒続くが、だいたい2秒が平均。表情の持続時間は感情の度合いの強さに比例する。
わたしたちは人がなぜ怒っているかをわかっていると思いがちだが、その解釈が当たっているとは限らない。(例:注意したことで怒った表情を相手が浮かべていても、注意されたことが不服なのか、注意されるようなことを自分が行ってしまったことに対する怒りなのか、他者は特定できない)
即座に問題を解決する必要があるときは、怒りをクールダウンさせないと、問題の特定や解決策を練ることに集中できず、怒りをさらに煽ることにしかならない。

恐怖の表情を読み取った時の対処法

何が感情表現を産み出しているかわかっていると思い込まないように注意する
恐怖という感情表現がなされた状況の流れから原因を割り出すことはできるが、他にまったく異なる原因があるかもしれないという可能性を考えずに、感情の原因がわかっていると思い込む過ちを犯す可能性がある。

楽しい感情 

愉しむ→最も単純な楽しい感情の一つ
満足→すべてがこれでいいと思え、何もする必要がないと感じる時。気が楽になる。
興奮→真新しいこと、挑戦心を掻き立てられることへの反応として生じる。単独で感じられることもあるが、怒りと混じって激怒にはったり、恐れといっしょになって強い恐怖になるなど、しばしば他の複数の感情と混じり合う。
安堵→自らを脅かす感情が引いていくときに覚える
驚き→まれにしか感じられないことと、理解できないものに圧倒される感情。強烈で、楽しい状態。持続時間は非常に短い
エクスタシー、至福→自己を超越する歓喜の状態。強烈なものであり、かすかにだけ体験できるものではない
高揚感→人の善良さ、親切心、思いやりなどを感じさせる思いがけない行為を目にした時に経験する暖かい感情。高揚感に触れるとより良い人間になろうとしたり、利他的な行為をしたくなったりする。

達成感について

子が親に与える達成感もある。
ユダヤには子が何らかの成果を収めた時、親が喜びを感じる体験を言い表す「ナチェス」という言葉と、それに関連した「クグェル」という言葉もある。

ナチェス→子供だけが親に与えることができる、喜びと誇りがないまぜになった強烈な感情(オリンピックで自国の選手が活躍した時に観客が感じるものと同じかもしれない)
クグェル→子供や孫の成し遂げたことで、強烈な誇りを感じ、顔を輝かせること 

喜びの表情「笑顔」笑いと顔の筋肉

口角を引き上げるだけでは喜びの表情とならない。正直な喜びの感情は大頬骨筋と眼輪筋がいっしょに収縮する表情となって顔に現れる。
眼輪筋を意図的に収縮させるのは難しいので、眼輪筋が動いていれば心から笑っていると判断できる。
非常に辛い状況に対面していても、眼輪筋を動かして笑うことができる人は回復が早い。

楽しくない「笑い」

お世辞笑いのような唇だけの笑い、会話の最中同意を示す笑いなどの他に、窮地に立たされた際に「笑ってこらえる」こともある。
それは面白くない感情を認め、自分が批判を浴びても笑っていられる潔い人間であるということを示している。

顔は口ほどに嘘をつく

顔は口ほどに嘘をつく


【邦画】かもめ食堂

食べることは生きること

序盤、片桐はいりさん演じるミドリが、食堂を営むサチエの手料理を食べて泣いたのは、久しぶりの食事で生きることを思い出したのかもしれない。
辛さに打ちのめされた日々から息を吹き返したきっかけ。

売りであるご飯がどれもリッチ!!
でかいシャケ!肉厚のトンカツ!
そしておにぎり。
この映画のおにぎりは、単なる料理のメニューの一つでしかないのがいい。
なにかと「けなげな女の子が男の世話のために作る=おにぎり」とされがちなおにぎりだけど、この映画では単なるメニューの一つ。
フィンランドではあまりウケてないのもいい。

キッチンとか食器がオシャレで高機能そう。
全体的に超リッチで、惜しみなく投資してる感じ。カツや唐揚げを揚げる油の量に感動したよ。惜しみない!

(若干ねたばれ)
フィンランドで食堂を営むサチエと、ひょんなことで食堂を手伝うことになったミドリとマサコ。彼女たちはなぜフィンランドにいるのか、きちんとした理由は判明しない。
なんとなく説明しても、はぐらかしてるようにしか聞こえない。
でも彼女たちは、お互い詮索はしないで、淡々と共に生活をしている。
その距離感がとても心地よい。
けど、フィクションとはいえ、ちゃんと経営成り立ってるのか不安になっちゃったよ笑(野暮)

かもめ食堂

かもめ食堂


【漫画】Paradise kiss

自信とは、己の足で地を踏み、己の手で掴むものだ

※若干ネタバレします

NANAは途中までしか読んでないけど、矢沢あい先生は「自信を持った人」「自信を持たない人」を題材にしたストーリーを編み上げている人なのかもしれない。

ジョージの言い分は矛盾しない

ジョージは紫に対して「おまえが好きだ」と「おれは自分の意思がなくて自信がない女は嫌いだ」という。
ジョージが紫に惚れた要素は「自分の理想通りの容姿」であり、内面ではない。
それに対して紫は「ジョージは私みたいな女は嫌いだって」と泣く。
問題点をごちゃまぜにし、自分が短絡的に出した歪んだ認知と解釈で落ち込むようなところがさらに嫌われる。
けど、高校生だしそこはしょうがないわな(そのあたりに口出しするのは野暮でしかないけど)

「自信がない女は嫌い」という高校生って…とも思ったけど、ジョージの場合唯一身近にいる母親が自信のない女で、ジョージは母親の自信がないところを嫌悪してるからこその嗜好なんだろう。
その上で「やりたいことを自力でやっているが故の自信がある女だけど、自分にはなびかないところが好き」というあたり、ジョージも自信持ってる男ではないよね。


ジョージと紫が結ばれなかったのは、二人の賢明な判断の結果だ。あのままくっついていたら、紫はジョージに恋するあまり不安に苛まれて自信をつけるどころじゃないし、紫がジョージを追いかける→ジョージは重い女になっていく紫に幻滅していく、のループに入っていただろうから。


あと、嵐と実和子の関係は、完全にDV夫と、夫の機嫌を損ねないように行動してケアする女房のそれ。
自分が嫉妬するからという理由で実和子を束縛して、大切な男友達に会ったり話したりすると怒鳴ったり、実和子のものを壊したり、果ては関係の始まりはレイプって…

何より実和子は、嵐の機嫌が悪い時、平気で自分の身を差し出すんですよ。

ぞっとしないでいられるか!

この漫画、ケア要員がほんとに出来すぎてて、しわ寄せが偏りまくってるところが辛くなるなー

1番素敵だと思ったシーンはラスト。
紫と婚約者が、過去好きだった人について笑いながら話すところ。恋愛を経てきた相手を受容し合っている大人のシーン。
これが自信を身につけた大人ですよ。

Paradise kiss 全5巻 完結セット (Feelコミックス)

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嫌われ女子50

「自信がなくて、ビクビクしてたから同性に気を使いすぎてた。ビクビクしなくていい。この本に書いていることも無視したければしてもいい」というあとがきにジンときた。

対談がどれも良い!
瀧波ユカリ先生との対談で「かりんとう好き」「おいしいよね」というくらいのたわいない会話を楽しむスキルがある方がいい・想像力を使って会話をするのがいいというのは目から鱗。
小難しい会話じゃないと有意義じゃないと思いがち…
あと「有意義な時間を提供しないと!」と気負いすぎるのもよくない。

豆知識
人間の心には【性の領域】と【仲間の領域】がある。
性の領域→容姿などで判断する。相手は性の対象である
仲間の領域→自分の価値観を理解してくれる、優しい、居心地がよいと感じる。
「自分が相手の性の対象外に入っていないと思ったら、いかに女を感じさせずに居心地の良さを提供するかが、相手を落とす鍵になる」
これ、女子は長期的にパートナーシップを築きたい男性に対して行う戦略として超有効だ。

嫌われ女子50

嫌われ女子50


【デザイン】なるほどデザイン

「迷った時はこれ読もう」と思える良著。さらっと眺められる。

「何を、誰に、どう伝えたいの?」という実例が沢山載っているのが嬉しい。

同じ素材で目的別に組んだデザイン本って意外と見たことなかった。
(例:「男女問わず料理初心者が・朝食の作り方を・迷わないために・長く使ってもらいたい書籍」「料理好きで関心高い女性が・朝食のバリエーションを・楽しんでもらう・月に複数回発行される雑誌」)
デザインを始めた人は読んだ方がいいのではないかと。

【ティム・ガン】2冊

「美しくなれる法則」「ゴールデンルール」と邦題がついていますが、ティム・ガンのエッセイの合間に美学が少し語られるといった体裁。
具体的な改善例がなかったり、少し情報が古いので(今死ぬほど流行っているガウチョの扱いがひどいとか)あまりおすすめしない。

誰でも美しくなれる10の法則 (宝島SUGOI文庫)

誰でも美しくなれる10の法則 (宝島SUGOI文庫)

ティム・ガンのゴールデンルール

ティム・ガンのゴールデンルール