【漫画】藤子・F・不二雄大全集SF・異色短編集1
遅効性の猛毒群
「ミノタウロスの皿」「気楽に殺ろうよ」など、今でも話題になる異色の短編を多数収録。
これが40年前に描かれたなんてめまいがするな!今読んでも全く古びてない。というか、普遍的。
常識、あたりまえ、普通から逸脱したところに「不思議」が産まれる。
「SF」が「すこし不思議」の略であるということは、藤子・F・不二雄先生は常に「不思議でない=常識、あたりまえ、普通」という軸を意識していたはず。
倫理や人をずっと見つめ続けてきた人が描く闇は、真っ黒すぎて恐ろしいほど。
読んで1日経っても、美しい描線で描かれた可愛らしいキャラクターから溢れる狂気(と私は判断する)が恐ろしくてゾッとする。
ロッカー管理人のおじさんにおにぎりを差し入れに行った奥さんの顔とか、「食料は保存パックに入れてくれ」というおじいさんとか。
「イヤな イヤな イヤな奴」の集団心理描写の巧みさとか、一体どうしてこの人は、こんな作品が描けるんだ…
有名なミノタウルスの皿は、アニメより漫画の方がよかった。
コマ割りが素晴らしい!
扉絵も構図が洗練されすぎ。そしてラスト1ページ1コマでひっくり返すから心臓に悪い。
人口爆発で食料がなくなり老人が捨てられるという話が多いのは、先生自身も、漫画家として若い人に追いやられてしまうプレッシャーが強かったのも大きな要因ではないかと。
あと、基本的に男の子がおじさんかおじいさんの主観で進む話で、女性は全て舞台装置。
妾描写も多いのは時代のせいか。
今だったらどんな作品を作ってくれたのかな…
- 作者: 藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: コミック
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