【小説】あのこは貴族
東京に確実に存在するが、秘密にされている貴族と、決して交わらない庶民について
何代も前からお金持ちで、政治家先生もたくさん出ている家の出身で、幼稚舎から慶応。話すと感じがよく優しいが、秘密主義。よく見るとハンサムだが昔からずっと同じであろう坊ちゃん刈り、それが今回の王子様。
オザケンもそんな感じだな…
一部舞台が慶応だから、桐野夏生様の「グロテスク」と通ずるところも。
呪いを断ち切れ革命を起こせ
王子様もお姫様も、単なる舞台装置なので自我はいりません。自我が産まれたら発狂します。
【注意】まぁまぁネタバレします。
結婚は単なるシステムの一つなのに「結婚さえすれば幸せになれてすべて解決」と思わされているところに地獄がある。
いやーよい作品でした!!!貴族階級である華子の察してちゃんぶりにかなりイライラしたけど、その描写も見事だし、ラストの爽快感が最高!
山内マリコさんの作品のいくつかは、王子様を中心にして様々な女の子が周りにいるという構図。「ここは退屈迎えに来て」は読んでて頭を抱えました。
女の子たちは革命を起こして呪いを断ち切れているのに王子様だけは呪いの連鎖に組み込まれたまま。
ざまぁと思うのが半分、「自らを救えよ!お前が断ち切らないと完全なる革命にならないんだよ!」と襟を掴んで揺さぶりたいのが半分。
王子様という存在もシステムの一部だから、自我が目覚めちゃうと王子様じゃなくなるのですが…男の子の方が保守的な傾向は強いみたいですね。
女の子はお姫様から自力で立てる人間になれるんだけど。マイノリティなせいかな。
地方出身アウトサイダーな私は楽しく嬉しく読めたけど、貴族階級の人たちはどんな感想抱くのかとても気になります。
周りに貴族いないから確かめる術がないけど。
創作だとわかっていてもビリーバビリティ(作品の中の説得力)が抜群。
本当に頭にきたのが、祖母が言う「離婚した女は一生不幸になる(立派な男に嫁がないと幸せになれない)」という発言。これは呪い。
自分がなくて人に察してもらわないと生活できなかった華子が、その呪いをぶち壊せたのは本当に嬉しかった。ふふっと笑えるエンドをいつも用意してくれるところがすごく好きです。