【小説】母性
母親に母性が備わってるなんて嘘ですよ
産院に置くには刺激が強すぎる作品なんでないかしら??
この本を知ったのは出産直後。子供を産んだ病院に置いてありました。誰だチョイスした奴は。
※ネタバレしてます。
信用できない語り手・母親と、反転させる娘
この物語は「母親」と「娘」と「正体を明かされない誰か」の主観によって進められます。
その母親が自分の言うことやってきたこと全部美化しまくってて全然信用ならねぇ。
この母親、とにかく言いたいことはひとつ。
「私は悪くない」
そう主張する奴が善良だった試しなんてないもんですよ。
母親視点の独白の後に娘の回想が被さる構成なのですが、これがもうつらい!
母親は「娘を抱きしめた」と供述してるけど、娘の回想では「母親に首を絞められた」という真実が明かされる。
「ミステリという勿れ」の台詞【真実は人の数だけある・事実は一つしかない】を連想します。
母性ってなんだよ?
この作品でははっきりと「母性とはなにか」の結論を出していて、それには本気で同意しました。
親からの無償の愛なんて無いよ
また育児の話になりますが、子供を産んで半年。今でこそ赤子死ぬほど可愛いと思いますけど、産んで2・3ヶ月くらいは全然可愛いと思えませんでした。産んで3週間目のくらいのころ、半日泣かれまくった時には赤子を投げ捨てたくなりましたからね…その節は本当に申し訳ありませんでした…
無償の愛は、子供から親に注がれている
じゃあ無償の愛はないかというとそんなことはまったくなくて、子供からの無償の愛はすごく感じるし見聞きします。
子供は親を簡単に見捨てません。
同格同士なら簡単に見捨てられますが、子供が親を見捨てるにはものすごいコストがかかります。
本来守られ保護される立場である子供に気を使わせるのは本当に嫌です。
昔から「母であること」だけがアイデンティティな人間になることだけはごめんだと思っていました。
子供はいずれ大人になって親から離れるのに、母であることを手放したら何も残らなくなるなんて恐ろしすぎます。
でも自分を喪失しそうなとき、私は強く子供を残すことを望みました。
そのときに子供を授からなくて本当によかったと、心底思います。
そのときに妊娠出産していたとしたら…私は子供を使って叶わなかった夢を叶えようとしていたでしょう。完全に虐待です、それは。
阻止できて、幸運でした。