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【映画】ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

他者がいるから、傷つきあい、愛が産まれる

愛の起源(Origin of Love)
人は以前、表は男・裏は女で、手足は2本組が2本、顔が前と後ろについていた。
ある日神の怒りを買い、稲妻を落とされ、分離した。
「また怒りを買うようなことをしたら、今度は一本足で跳ねて、一つ目で生きることになるよ」
二人は抱き合い一つに戻ろうとした
それが愛、セックス
神の手により人は二足歩行になった
それは悲しい物語
愛の起源の物語

僕を否定すれば破滅する

トランスジェンダーのヘドウィグは問う。
「私は自分の片割れを探したい。でもそれは男?女?どんな姿形?私にそっくり?それとも補い合う?なぜ離れたの?逃げたの?二人の人間は元に戻れるの?」

自分の掛け替えのない片割れを失って、全力で追いかける。

「あなたとなら産みだせたのに」

ヘドウィグの体は男なので、愛した男の子供を産むことはできない。
でも、トミーとなら曲を作ることができた。
それら楽曲はまぎれもなく、彼らの子供。
それを奪ってトミーは逃げ、成功をおさめた。
かつて愛した人は子供を利用してスポットライトと賞賛を浴びている。
横では、落ちぶれて惨めな自分。

自己愛と執着を、彼への愛と復讐だとラベリングして、ヘドウィグはかつての片割れをストーキングする。

原作ミュージカルでは、トミーとヘドウィグは一人二役とのこと。どう考えても投影と自己愛です本当にありがとうございました。


ヘドウィグは現在の恋人イツハクとは曲(子供)が作れない、というのが冒頭で示される。


彼はメイクやウィッグで作り上げていた武装を、解いても生きていける境地までたどり着けた。


最初はおぞましさすら感じられたヘドウィグが、物語を進めて歌を聴くたびに美しく見えるようになってくる。
傷ついてきた彼が生き延びてきた事実に涙が出る。

ヘドウィグは髪短い方が断然綺麗…というのは当たり前で。
飾り立てた濃いメイクやウィッグは、逆に枷だったのだろう。
ウィッグは元夫に渡されたものだし。

人生で虐げられたり、弄ばれた経験がある人は泣いてしまう映画だと思う。

というか「アングリーインチ」って、性転換手術に失敗した股間のことか…Wikipedia読んでやっと知った
怒りや憎しみを受け入れられきれてない感じがつらいんだよな、序盤

アニメと実写の組み合わせ、構成など、映像としての楽しさ・美しさ・狂騒の表現が秀逸で、トリップしそうでした。
あとDVDメニューかっこいい!
DVDメニューがかっこいい映画はポイント50くらい上がります

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]

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素敵な感想や解説を綴っていらっしゃるブログを見つけました

↓イツハクのことだけがわからなかったけど、この解説を読んで納得しました

そうか、ヘドウィグも抑圧的で残酷な仕打ちをしていたんだ

↓なぜ「6インチから5インチ消えて1インチ」なのかの解説。予想以上に深い理由!