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【児童文学】兎の眼

パンクロック児童文学

連れ合いイチオシの児童文学。
図書館で予約して借りてみたら昭和55年発行限定500部・埼玉福祉会発行・一冊4500円のやたら大きいやつだった。文字が非常に大きいので、これ読んだ後だとスマホの文字がえらく小さく感じる。

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タイトルの「兎の眼」は善財童子のこと。画像検索して見てから連れ合いとモノマネする鉄板ネタになりました。これが好きな小谷先生22歳、趣味がしぶい。

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言葉を持てば生きやすくなる

処理場に住む被差別部落地域の話で、出てくる子供達は学校に通ってはいるけど教育が身についておらず、怒るとすぐ暴力に走る(というより暴力しか表現方法がない)、嬉しいことや好きなことを人に伝える術がない、という描写が前半には良く出てくる。

日大アメフト部の会見を見てても思ったけど、語彙の少なさというのは人生において致命傷になるな、と最近痛感しているので、その描写の説得力は強い。
語彙がないと自分の気持ちを正確に掴むことがまずできないから、人に伝えることができない。
そうなると必ず誤解が生まれ、不必要な心労が過剰に発生し、気持ちを圧迫する。

教育はあらゆる意味で人を救う。水素水に騙されないとか、無駄に命を奪わないとか。

 

所属=服従、ではない

処理場の人によるストライキも提案される。ストライキについて「労働者のストライキする権利を持っている」とはっきりと言っているのが印象的だった。ストライキの意味をきちんと知ってる人の方が今は少ないだろうからなー。

 

ガンジーの「不服従」に倣った行動も色々。ハンストする先生なんて今、創作ですら出てこないでしょう。

 

まだ戦争の色が濃い

「死んだ人の命を食って生きている」

「先生のお兄ちゃんは泥棒が平気やった。何回も何回も泥棒したんやな。姉妹が7人もいたからつばめがえし何回も何回も泥棒したんやな。」

「お巡りさんに捕まらへんかったんか」「捕まったで。何回も捕まった。けど、何回も泥棒をした。先生のお兄ちゃんはとうとう少年院に送られることになってしまった」「その日、先生のお兄ちゃんは死んだ」中略「泥棒して平気な人間はおらんわいな。先生は一生後悔するような勘違いをしとったんや。先生はお兄ちゃんの命を食べとったんや。先生はお兄ちゃんの命を食べて大きくなったんや」「先生だけやない。今の人は皆人間の命を食べて生きている。戦争で死んだ人の命を食べて生きている。戦争に反対して殺された人の命を食べて生きている。平気で命を食べている人がいる。」

 

灰谷健次郎を読ませたがらないのが日本の小学校のようだけど(服従を教育する機関が不服従の文学なんか読ませないわな)今の教員で読ませる読ませないの判断自体ができる人の方が少なくなっちゃってるんじゃないだろうか。

灰谷健次郎が生きていたら、今の日本を見て何と言うのだろう。多分絶望して泣いてしまうだろうな。

 

とか思ってたら、ちょうど新潮45がやらかしてましたね、LGBTには生産性がないという記事を掲載して。

「新潮45」が杉田水脈氏擁護の特集を掲載 新潮社内から異論 - 産経ニュース

少年Aの写真を掲載した雑誌を発行したのをみて激怒して著作物を全て引き揚げた灰谷健次郎さんは強い倫理観を持った人だったんだなぁ…

 

ほんとパンクロック。

 

兎の眼 (角川文庫)

兎の眼 (角川文庫)

 

 

余談ですが、灰谷健次郎さんが色々な人と対談した「われらいのちの旅人なり」を読んだら「私は二回結婚してて、2人とも服毒自殺してるんです」と言ってて「どうしてそうなった」と戦慄しました。2人ともっていうのはおかしいだろどう考えても。

 

われらいのちの旅人たり

われらいのちの旅人たり